株式分割 新株売買翌日に(続報) | 株券がなくなるってほんと?

株式分割 新株売買翌日に(続報)

少し時間が空いてしまいましたが、2005年3月9日付日経新聞「株式分割 新株売買翌日に」の続編を書かせて頂きます。

1.法律面

まずは法律面から整理しておきたいと思います。

本件に関係するものとして、保振法と商法がありますが、株式分割に関係する部分は以下のとおり。

保振法は株式の発行された日をもって預託したと「みなす」といういわゆる「みなし預託」制度があります。ですから、権利確定日の翌日が発行日であれば保振法はクリアされます。

一方の商法ですが、現在は発行会社が、権利確定日から50日程度余裕をみて発行日を設定していますが、

・商法上は権利確定日がデフォルトで発行日
・権利確定日以外に発行日を設定することも可

となっています。発行日は権利確定日から50日あけなくていけない、などとは書いておらず、発行会社で決めることが出来そうですから、現行の法律の枠組みのなかで対応可能と見受けられます。

○ 株券等の保管及び振替に関する法律

 (新たに発行された株式に係る株券の預託)
 第十九条  預託株券の株式につき、株式の併合、分割若しくは
 転換(第二十条第一項の請求によるものを除く。)、会社の株式
 交換、株式移転、合併若しくは分割による株式の発行又は株主に
 新株の引受権を与えてする株式の発行(新株引受権証書が発行さ
 れた場合を除く。)があつた場合には、その新たに発行された株
 式につき、当該株式が発行された時に、第十四条第一項の規定に
 より保管振替機関に株券の預託がされたものとみなす。
 
○ 商法

 第二百十八条  会社ハ取締役会ノ決議ニ依リ株式ノ分割ヲ為ス
 コトヲ得

 第二百十九条  前条第一項ノ決議ヲ為シタル場合ニ於テハ会社
 ハ株式ノ分割ヲ為ス旨及会社ノ定ムル一定ノ日ニ於テ株主名簿ニ
 記載又ハ記録アル株主ガ株式ノ分割ニ因リ株式ヲ受クル権利ヲ有
 スベキ旨ヲ其ノ日ノ二週間前ニ公告スルコトヲ要ス
  
 ○2 株式ノ分割ハ前条第一項ノ決議ニ於テ別段ノ定ヲ為シタル
 トキヲ除クノ外前項ノ一定ノ日ニ於テ其ノ効力ヲ生ズ
 
2.実務上の問題

法律面はクリアしそうですからあとは実務的な側面の検討になります。

① 保振のシステム

保振においても株式交換や株式移転の場合には、参加者から新預託株数申告という手続きを行うことで、株式交換日あるいは株式移転登記日の翌日から決済が可能となっています。この仕組みを株式分割においても活用する方向で調整が進むものと見込まれます。

保振側でシステム変更されれば、参加者も変更が必要となります。

② 名義書換代理人

ここで名寄せの問題が発生し、これがボトルネックの一つになる旨、前回指摘させて頂いたのですが、参加者毎の新預託株数申告を受けた後、事後的に名寄せ作業を行うことになるものと見込まれます。

また、保振に預託した場合と、本券で保有した場合で株主に有利/不利が発生する可能性がありますが、現在でも合併に伴い券面の差し替えを要するケースなどでは、現在でも保振に預託したケースと本券で保有するケースでは有利/不利が生じていますので、この点を理由に制度の導入を拒むことはできないものと見込まれます。


3.事実関係

新聞報道にありましたが、証券会社と保振が合意した事実はなさそうです。ただ、保振でも検討は行っている模様にて、新聞報道にある方向で検討が進む可能性が高いです。


4.雑感

じゃ、いままでどうしてやらなかったんだよ!という声が聞こえてきそうです(^^;


<2005年3月15日 補記>
この議論は2002年の秋ごろ一度検討されたようです。きっかけはソフトバンクの1対3分割。このときに問題になったのが、信用取引の担保にソフトバンク株を入れていた人がソフトバンク株が理論上1/3に下落、担保われをおこし追い証を求められたということ。

結果、株式分割=>売りという図式になったようです。
たった2年そこそこで時代も変わるもんですね。

当時としては、影響と対応負荷を比較し、結論として見送られたようです。

(おしまい)