放送局の外資規制について考える | 株券がなくなるってほんと?

放送局の外資規制について考える

2005年2月24日付日本経済新聞朝刊に「放送局 外資規制を強化 自民調査会一致 今国会提出へ調整」との記事が掲載されていました。ライブドアvsニッポン放送のゴダゴダから派生した問題ですが、これについて少し整理してみたいと思います。

1.現状の規制

現在、日本において外国人の株式取得に制限が加えられているのは、航空会社(航空法)、NTT(NTT法)、と放送会社(放送法及び電波法)の3業種ですが、ここでは放送会社に絞って話しをさせていただきます。

現状の放送会社に対する外資規制は要約すると以下のとおりです。

① 放送会社は電波法に定める外国人制限比率を越える場合、株主名簿への記載を拒むことができる。(放送法第52条の8)
② 制限比率は20%とする(電波法第5条第4項第2号)
③ 外国人の定義は
  ア 日本国籍を有しない人
  イ 外国政府又はその代表者
  ウ 外国の法人または団体
④ 制限比率を越えた場合には無線局の免許を与えない(電波法第5条第4項)


(ご参考)NTT法、航空法における外資規制も基本的には同じ立て付けで、株主名簿への記載を拒むことで制限を加えています。

2.今回の話題

今回、ニッポン放送株をめぐる一連の動きの中でライブドアがリーマンに対しMSCB800億円を引き受けさせているため、リーマンがライブドア株に転換しライブドアの株主になった場合、ライブドアが米リーマンに支配される外国会社となってしまい、外国会社であるライブドアがニッポン放送を支配することで、現行の外資規制の抜け道ができてしまう。それはそもそもの外資規制の趣旨に反するから、この穴を防ぐため、外資の間接出資も考慮した法改正を行いましょうということです。

3.ポイント

放送法の外資規制の是非についてはここでは不問として話を進めますが、そもそもの規制の趣旨を鑑みれば、今回の規制強化は狙いとして全うなものです。

ただ、今回の規制強化案については実はいろいろと難しい問題があります。

① 間接出資の確認

今回、外資規制が強化されると、例えばキャノンが放送会社の株をもったらどうなるの?というレベルの問題が生じます。つまり日本の企業でも(不特定多数だと思いますが)外国人の持株比率が半数を超えて会社があります。あるいは日産自動車のようにルノーの子会社となっているケースもあります。こういう人たちが、ニッポン放送株をかったら、外資規制の対象になるかどうか、ということです。

さらに問題を複雑化させるのが、株主名簿を閉めてみないと、外資の間接出資って把握できないということです。つまり、今、キャノンは外国人が過半数もっています。でもそれは前回決算時点のお話。今はどうなのかは、誰もわかりません。さらには、キャノンの100%出資子会社など、キャノンが外人だと判断されれば、その子会社も外人になるし、そうでなけばそうでないし、とドミノ倒しのようなこともあります。そうなると実際、間接支配の連鎖がどこまで行けば終わるのかはっきりイって分かりません。

# 実はNTTの場合、この間接支配基準がすでに導入されています。
  しかしキャノンが外人扱いされているかは神のみぞ知ることです。

② 人格の問題

世の中、個人と法人しかなければ外人どうかの判断はできそうです。でも世の中にはファンドがあふれていて、このファンドをどう考えるかは永遠の問題かと思われます。ファンドの国籍が明確で人格が明確な場合はいいのですが、究極のところは個別に判断することになると思われます。人格がないファンドだと、その構成員までたどるの?などという疑問も沸いてきます。

放送会社の外資規制、口言うのは簡単ですが実際は相当、割り切りを入れないとワークしません。


4.余談

以前JALがJASと持株会社JALシステムズを作って上場した際、航空法の適用は子会社のJAL、でも上場しているのは持株会社で航空法の適用をうけないJALシステムズという時期が1年くらい続き、JALシステムズを外資が買収すれば外資系エアラインが誕生する可能性があったのですが、昨年、航空法が改正され、航空会社の持株会社も外資規制の対象に加えられることになりました。お茶目です。